シトリン欠損症患者のエネルギー、蛋白質、脂質、および炭水化物の摂取量の分析
*このページに記載のコンテンツは岡野先生のご厚意によりご自身の論文(原文英語)を一般の方にもわかりやすい形で日本語にてまとめていただいたものです。このように常に私たちに寄り添い、また忙しい診察の傍らで研究を熱心に行い、シトリン欠損症の解明や治療に向けて全力を注いてくださる岡野先生に敬意を表します。 シトリン欠損症患者のエネルギー、蛋白質、脂質、および炭水化物の摂取量の分析:成人発症II型シトルリン血症の予防に向けて 岡野善行1,2、岡本美紀2、矢崎正英3、乾あやの4、大浦敏博5、村山圭6、渡辺順子7、徳原大介8、竹島泰弘2、シトルリン血症の会 1 おかのこどもクリニック、 2 兵庫医科大学小児科、3 信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所、信州大学医学部保健学科 検査技術科学専攻 生体情報検査学、4 済生会横浜市東部病院 小児肝臓消化器科、5 仙台市立病院臨床検査科、6千葉県こども病院 代謝科、 7久留米大学医学部小児科 質量分析医学応用研究施設、8 大阪市立大学大学院医学研究科発達小児医学 2018年に皆様の協力のもとに食事内容や食品の好き嫌いについてのアンケート調査を行いました。ようやくその一部がまとまりましたので報告致します。今回は、患者の皆さんが日々食べている食事内容についてまとめています。お時間のない方は最後の「まとめ」だけでもご覧ください。また、より詳しくお知りになりたい方は原文(英語)をお読みください。(原文アドレス https://doi.org/10.1016/j.ymgme.2021.03.004 )。 1.方 法 1-1.参加者 2~63歳の62人の患者(男性36人、女性26人)と2~61歳の45人の対照者(男性22人、女性23人)が参加されました。対照者は患者と同居している方、または食生活をともにしている方としました。2〜16歳の43人の患者のうち39人が乳児期にNICCDと診断され、早期の食事指導が可能でした。残りの4人の患者は適応/代償期に診断されました。17〜39歳の10人の患者のうち、3人は新生児期の胆汁うっ滞症で、5人は適応/代償期に、2人は成人発症2型シトルリン血症(CTLN2)で診断されています。40歳以上の9人の患者のうち、8人はCTLN2と診断され、1人は適応/代償期でした。CTLN2患者はいずれも肝移植を受けていません。 1-2.栄養評価 3〜6日間(平均4.6日)の食事記録に基づいて栄養評価を実施しました。2015年日本食品標準成分表でカロリーと蛋白質、脂質、炭水化物の栄養量を計算しました。また、2016年国民栄養調査に基づいて性別年齢別に標準者を100%として患者や対照者の栄養量を計算しました。 例:10歳のA君の食事記録から栄養計算した結果、エネルギーは1日平均2274kcalだったとします。2016年国民栄養調査データによると10歳男児の平均値はエネルギー1976kcal、蛋白質72.3g、脂質64.1g、炭水化物269.6gですので、A君のエネルギーは2274÷1976=約115%(平均より15%多い)となります。 2.結 果 結果を説明した散布図ではそれぞれ調査に参加した個人が●・●・■などのいずれかのマークで表されています。散布図は横軸に年齢を、縦軸に調査結果の数値を示しています。 それぞれのマークは ●:Non-CTLN2患者(CTLN2を発症していないシトリン欠損症患者;52人)、 [...]
MCTオイル と ココナッツオイル
MCTとは? MCT(中鎖脂肪酸)とはココナッツオイルなどに含まれる脂肪酸です。MCTは6-12の炭素数を持ち、他の食物に多々含まれている長鎖脂肪酸とは別の経路で代謝されます。MCTは直接肝臓に届き、速やかに効率よくエネルギー源となり代謝されます。 MCTには主に以下の4種類があり、含有割合に違いはあるもののこの4種類はすべてココナッツオイルに含まれています。 a. カプリル酸 (C8) b. カプリン酸 (C10) c. カプロン酸 (C6) d. ラウリン酸 (C12) MCTオイルとは? MCTオイルとはC8とC10が多く含まれるように精製抽出されたココナッツオイル合成油です。この工程でココナッツの脂肪分を除外し、またココナッツに多く含まれ代謝が比較的遅いC12を除去しています。 MCTオイルとココナッツオイルの違い ココナッツオイルは、飽和脂肪酸、モノ飽和脂肪酸、ポリ不飽和脂肪酸の混合物です。 飽和脂肪酸はカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸の7つの脂肪酸からそれぞれの含有割合で構成されています。 ラウリン酸(C12)は、ココナッツオイルに含まれる主要な脂肪酸で、ココナッツオイルの44.1% – 51%を占めていますが、この脂肪酸は中鎖脂肪酸とも長鎖脂肪酸とも定義されることがあります。炭素原子数は中鎖脂肪酸定義内の12個ですが、中鎖脂肪酸のほとんどは消化中に直接門脈に吸収される一方、ラウリン酸の吸収挙動は長鎖脂肪酸と類似しています。 したがって、ココナッツオイルを摂取することは、MCTオイルを摂取することと同じとは言えません。 ココナッツオイルを摂取することにより長鎖脂肪酸相当量も摂取していることになり、目的とする食事法とは異なってくる可能性があります。 MCTオイルとココナッツオイルの究極の違いはそれぞれの中鎖脂肪酸の構成にあります。MCTオイルには中鎖脂肪酸が最も純粋な形で含まれています。
炭水化物を食べた後気分が悪い?それはシトリン欠損症かもしれません。
炭水化物を食べた後気分が悪くなりますか? 炭水化物は食物に含まれる主なエネルギー材料で、人体に必要不可欠です。「炭水化物」とは果物、野菜、穀類、乳製品などに含まれる糖質、でんぷん、食物繊維を指し、白米、パスタ、パン、菓子は炭水化物を多く含む食材の代表例です。 […]
MCTを含む粉ミルク
シトリン欠損症において食事管理は非常に重要です。 シトリン欠損症患者は、低炭水化物、高タンパク、高脂肪食を摂取することが推奨されています[Saheki et al 2008、Nakamura et al 2001]。 またMCT(中鎖脂肪酸)摂取がシトリン欠損症に有益であると感じる医師が近年増えています。MCTの有効性に関する研究は順調に進んでおり、今後のシトリン欠損症治療の確立に期待が高まります。 新生児肝内胆汁うっ滞症(NICCD)を伴う乳児へは乳児用粉ミルクの導入が推奨されます。担当医とよくご相談ください。 下記はMCTを含む粉ミルクのリストです。お住まいの国により入手不可能の場合があります。入手可能の場合はショップまたはメーカーのウェブサイトをご覧ください。 (日本では主治医を通して特殊ミルクが乳業メーカーの負担で患者さんには無料で供給されます。主治医にご相談ください。) MCTフォーミュラ 1. Aptamil® Gold+ Pepti-Junior from birth (対象年齢:生後~12ヶ月)https://nutricia.com.au/aptamil/products/aptamil-gold-pepti-junior/# 2. 明治 必須脂肪酸強化MCTフォーミュラ (対象年齢:生後~)このフォーミュラには当該製品に含まれる脂質成分の82%を占めるMCTが配合されています。 3. Nestlé Peptamen Junior (対象年齢:1~10歳)Nestlé Peptamen [...]